
「蛾」 395×800㎜
「ほしーそれぞれの輝き」に出展中の作品。
ほし=月の情景が含まれる、金子光晴の「蛾 Ⅵ」という詩にインスピレーションを得て作りました。
終戦の一週間前に書かれたというこの詩。
鱗粉をたっぷりつけて、羽ばたくのも重々しい・・・それでも尚飛び続ける蛾の群れ。
蛾は、
感情を覆い隠すほどの大義名分を掲げ戦に赴く国民か
言葉の力では変えられない流れに無力感を感じていた金子自身か。

木のチップを吊るしたオブジェと組み合わせた今回の展示。
舞った鱗粉、涙、黒い雨・・・・

解釈に正解はありません。
あなたはこの詩を作品をどう読みますか?
金子光晴「蛾 Ⅵ」
蛾は月に透いてゐる。
翼一ぱい吸い込んでゐるのは無ではない。光だ。
蛾は、裸をみられてゐるのを意識して、はづかしさうにあゆむ。・・・・・・音はない。近づくけはひだけ。
灯をそつと吹き消すやうな音を立ててすり寄り、消える前の焔がゆらぐやうに翼をうち、
蛾は、その影とともに人の心の虚におちこみ、そこにやすらふ。
蛾は、数ではない。負数なのだ。
蛾のうつくしさ。それはぬけ殻ではない、ひ剥がれた戦慄なのだ。
汚され、破られ、すてられ、ふみにじられたいのちの、最後のさびしい火祭なのだ。
僕らの生きてゐるこの世界の奥ふかさは、恥となげきのうづたかい蛾のむれにうづもれ、
木格子を匍ひのぼり、街灯を翼で蔽ひ、酒がめにおちてもがき、
濠水に死んで浮かんでゐるあの夥しい蛾のむれに。
ご覧いただきありがとうございます。
8月15日を前にして。戦後70年に思うこと。

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